顧客本位を訴える金融庁のせいで金融機関が販売自粛を強いられ毎月分配型の投資信託が売れ行きが落ち込んでいると経済紙が記事にしています。
以前には毎月分配型の投資信託にもこまめに利確したいという顧客のニーズがあると書いていました。今度は金融庁の方針のせいで国内REITを保有する毎月分配型の投資信託から投資資金が流出しているためにREIT市場の需給の悪化につながっているとまで主張されています。
国内REITの需給の悪化は公募増資が相次いだことが理由だと思うのですが、顧客にとって手数料の割高な毎月分配型を取り上げ擁護するかのような経済紙は、いったい誰の意向を「忖度」しているのでしょうね? ……なんて冗談はさておき(苦笑)、毎月分配型以外の選択肢について考えてみました。
金融庁の方針
金融庁はウェブサイトでも行政方針を公開しています。金融行政方針 平成28事務年度金融行政方針 主なポイント(PDF)
この中で金融庁は「国民の厚生の増大を目指す」ために必要な変革として「国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換」を挙げています。
「家計における長期・積立・分散投資の促進」と同時に、「金融機関等による顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の確立と定着」も目標としています。後者は以下の2点を課題としています。
・手数料稼ぎを目的とした顧客不在の金融商品販売
・商品・サービスの手数料水準やリスクの所在が顧客に分かりにくい
毎月分配型以外の選択肢
金融庁の問題視する手数料稼ぎを目的とした割高な毎月分配型の投資信託ではなく、廉価なインデックスファンドを拡販し、投資信託の定期売却サービスを用意するほうが正攻法ではないかと思うのですが、それでは儲からないということなのでしょうか。下の表は、とある金融機関で販売上位の海外REITに投資する毎月分配型ファンドと、同じく海外REITに投資するインデックスファンド(※)を比較したものです。販売時手数料は上限です。過去の成績は将来の運用成績を保証するものではありません。
2017年5月26日現在 分配金(税引前)を再投資と仮定 |
他にも毎月分配型の投資信託が販売上位に入っていて、本当に販売が自粛されているのか疑問があります。毎月分配型の資金流出と販売不振の理由は、販売側の自粛ではなく賢明な顧客側の利確や様子見もあるのでは?
ちなみにこの毎月分配型の投資信託の分配金利回りは6.04%ですが、月報によると投資信託が投資しているREIT(不動産投資信託)の配当利回りの加重平均は4.8%となっています(2017年4月末現在)。
REITがずっと値上がりを続けるなら投資信託の分配金利回りのほうが投資先の配当利回りよりも高くても分配金を出し続けることは可能ですが、現実的な想定ではないですよね。
※ <購入・換金手数料なし>ニッセイグローバルリートインデックスファンド。S&Pグローバルリートインデックス(除く日本、配当込み、円換算ベース)という指数の動きに連動する投資成果を目標にしています。このファンドへの投資を推奨するものではありません。
投資信託の定期売却サービス
SBI証券では投資信託の定期売却サービスが用意されています。「毎月コース」のほか、「奇数月コース」、「偶数月コース」から選択でき、年2回まで「ボーナス月コース」の設定を組み合わせることもできます。このサービスを使うことで、毎月分配型投資信託よりも手数料の安いインデックスファンドを毎月分配型のように利用するも可能です。SMBC日興証券や野村証券でも同様のサービスがありますが、今のところ対象となる投資信託がごく一部に限られています。
もっとも定期的に売却するよりは必要なタイミングで換金するほうが合理的ではあります。
まとめ
毎月分配型の投資信託は手数料が割高です。元手が100万円だとすると購入時に2~3万円の手数料を引かれ、毎年1万円~2万円の運用管理費用(信託報酬)の負担も必要です。分配金によって運用効率も落ちます。金融庁は行政方針として「企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指す」としています。残念ながら毎月分配型の投資信託は「安定的な資産形成を実現する」手段としては不向きですし、金融機関への不信感を募らせる原因にもなるとしたら「企業・経済の持続的成長」に役立つこともないでしょうね。
こぼれ話
こちらもなかなか興味深いです。
・PDF「フィンテックは共通価値を創造できるか」(金融庁長官講演)
「供給側の論理によるマス定型商品の提供」という B2C 型のビジネスモデルから、「顧客情報に根ざす共通価値の創造」という C2B 型ビジネスモデルへと移行するための環境が整
いつつある過程なのではないか
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