人口増加国に着目した『iTrust新興国株式』の特徴と運用実績をインデックスファンドと比較してみました。
労働人口が拡大し高い経済成長が期待できる国への投資は本当に報われるのか、設定来の運用実績を新興国に幅広く投資するインデックスファンドと比べています。
iTrust新興国株式とインデックスファンドの特徴
アクティブ運用の『iTrust新興国株式(愛称:働きざかり~労働人口増加国限定~)』(ピクテ投信投資顧問)は、労働人口が拡大していて、相対的に高い経済成長が期待できる新興国の株式に分散投資します。14ヵ国の122銘柄を組み入れています(2021年6月末現在)。
運用管理費用(年率)は税込1.1775%程度です。
『eMAXIS 新興国株式インデックス』(三菱UFJ国際投信)と『eMAXIS Slim 新興国株式インデックス』(三菱UFJ国際投信)は、新興国の株式市場を対象にした「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざします。
ベンチマークの指数はアジア、中南米、中東・アフリカ、欧州の27ヵ国の1,412銘柄で構成されています(2021年6月末現在)。
運用管理費用(年率)は前者が税込0.66%以内、後者が税込0.187%以内です。
今回、取り上げたファンドは、原則として為替ヘッジは行いません。信託期間はすべて無期限です。
iTrust新興国株式とインデックスファンドの運用実績
下のチャートは『iTrust新興国株式』設定来4年3ヵ月弱の期間(2017年4月28日~2021年7月15日)で基準価額の推移を『eMAXIS 新興国株式インデックス』と比べたものです。比較しやすいよう起点の基準価額を1万円に統一しています。
『eMAXIS Slim 新興国株式インデックス』も含めた騰落率の比較は下の表の通りです(2021年7月15日現在)。
コロナショック時の調整局面の下落率は2020年2月21日(インデックスファンドは同20日)~同年3月24日の数字、設定来騰落率は4年3ヵ月弱の数字です。
2021年7月15日現在の純資産総額は『iTrust新興国株式』7.01億円(2017年4月28日設定)、『eMAXIS 新興国株式インデックス』360.22億円(2009年10月28日設定)、『eMAXIS Slim 新興国株式インデックス』684.15億円(2017年7月31日設定)です。
労働人口が拡大し高い経済成長が期待できる国を選別した『iTrust新興国株式』は過去6月の騰落率では盛り返してはいるものの、設定来の運用実績では新興国株式インデックスファンドに大幅に劣後しています。
現状の新興国株式インデックスファンドは構成比の4割弱を占める中国の影響が大きいです。中国やその近隣の地域(台湾、韓国)以外にもっと比重を置きたいなら、『iTrust新興国株式』も面白い選択肢かもしれないですね。
ただ、残念ながら「人口増加 → 経済成長の加速 → 株価の上昇」という単純な図式が常に成り立つほど投資の世界は甘くないようです。
・中国、人口減少に反転「27年から」 政府系シンクタンク予測(SankeiBiz)
ちなみに中国はすでに労働人口の減少が始まっていて、総人口も2027年から減少に転じると予測されています(悲観的な推計では2100年には人口が約3分の1にまで減少するとも)。
あるいは、だからこそ産業の育成に力を注いでいるという面もあるのでしょうね。
・規制緩和とともにIPOが活況となる中国本土市場(日興AM)
会計・コンサルティング大手のKPMGの調査資料によると、上海証券取引所における2020年のIPOによる調達額は、2019年に創設された新興ハイテク企業向け市場「科創板」での好調がけん引し、米国ナスダック、香港証券取引所に続いて高い水準となりました。
<中略>上海証券取引所に「科創板」が創設された背景には、米中対立がハイテク分野に及びその長期化が見込まれる中、新たな資金調達のプラットフォームを中国国内に立ち上げ、同国のハイテク分野のスタートアップ企業を支援することにあったと言われています。
人口増加国の将来性に着目した『iTrust新興国株式』は長期目線で見守りたくなるような興味深い投資信託です。
その一方で一般的なインデックスファンドでも株価の成長している国の比率は徐々に増えていき、逆に低迷している国は漸減していくことを思えば、多数の国に分散したインデックスファンドの取りこぼしのなさも堅実な選択肢のように思えます。
・新興国投資編(10)新興国の成長の恩恵を投資で受けるとは? 株式編(ピクテ投信)
・先進国株式に対して大きく出遅れた新興国株式に反撃の日は来ないのか?(モーニングスター)
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